福祉信託は聞きなれない言葉かもしれませんが、高齢者や未成年者、知的障碍者などの財産や生活を、信託を活用して支援することを目的とするものです。
つまり、民事信託の一種です。
今後、2025年には認知症者が700万人を超え、年々障害者の数が増加している我が国においては、ますます重要度を高める可能性があります。
具体的には、判断能力が低下して財産管理ができなくなった上記の者の財産を、信託によって積極的運用や使用して生活の充実を支援します。
これだけ聞けば成年後見制度とそうは変わらないと、思われるかもしれません。
しかし、成年後見制度は本人の財産保全が原則ですから、例えばよくあるケースとして、祖父母が孫の学校入学や結婚の際に祝い金を支出するといっても、なかなか家庭裁判所が認めてくれないものです。
最近では家庭裁判所によっては金額によっては認めてくれる所も出てきていますが、要は財産活用の自由度が低いです。
その点、信託であれば委託者の意思を最大限尊重した財産活用を設計できます。
また、信託は遺言書のデメリットも補完します。
これも事例がわかりやすいと思いますが、例えば自分が死んだ後、障害がある我が子を親族の誰かに託して財産を渡したとします。
遺言であれば負担付遺贈になりますが、実際に託された親族が我が子のために財産を活用してくれているか、監督する者がいません。
親族が自身のために遺贈された財産を消費しても、わからない可能性があります。
信託を利用すれば、受益者代理人、信託監督人といった信託目的達成をチェックする者を定めることができますので、安心です。
福祉信託は、判断能力が低下した方の財産を守るために、欠かせない制度になるでしょう。