信託がどのような場面で活用できるのかを、簡単ですが代表的事例で説明しています。
実際にはもう少し複雑なスキームになりますが、わかりやすくするあために簡素化しています。
事例1 息子の嫁に財産をあげたくない
信託活用の典型的事例です。
通常の相続であれば、自分の財産の相続権の第一順位は子供になります。
事例であれば、子供が相続した後で子供が亡くなり、二次相続では子供の配偶者(事例では嫁)が財産を相続することになります。
現行の遺言では、二次相続の相続人を指定することができません。
そのため、息子の嫁に自身の財産が渡らないようにするために、信託を活用するのです。
まず、委託者はご自身、信頼できる受託者に財産を信託し、受益者を息子にします。
信託契約の内容で、受益者である息子が亡くなった後、次の受益者を孫など財産を引き継がせたい者を定めるだけで、目的が達成できます。
信託でしかできないスキームです。
事例2 事業承継のため株式を子に移転したいが、経営を任せるのは不安
事業を経営している方のケースです。
自分はまだ経営者として第一線だが、元気なうちに子に事業を承継させたいと考えています。
しかし、株式を全部移転すると贈与税が掛かりますし、自身に何も権限が残りません。
経営者として未熟な息子に全てを任せるのは、まだ不安です。
株式の移転だけであれば、株主総会の承認を得て自身に黄金株(経営を決定できる権限を留保)して息子に渡せますが、贈与税の問題が残ります。
そこで、信託の出番です。
委託者は自身、受託者の息子に株式を信託し、受益者は自身です。
そして、自身の経営意思決定権を留保するために、株式の議決権行使に際して「同意権」「指図権」を自身が持ちます。
これにより、贈与税は信託により掛かりませんし、完全に経営権を子に渡さずに済みます。
事例3 自分が認知症になっても、不動産を売却できるようにしたい
ご本人というより、ご家族さんから相談が多いケースです。
ご本人が高齢で、将来的に介護費用や介護施設入居費用などを捻出する際に、預金と年金だけでは足りない。
いざという時に不動産を売却して資金に充てたいが、本人が認知症になってしまうと売却できないため、何とかしたいというご相談です。
この場合、成年後見制度の活用も視野に入ります。
本人の介護費用捻出のための自宅売却などであれば、後見制度でも可能だからです。
しかし、成年後見制度は家庭裁判所の監督があり、事務処理の報告義務もあります。それらが負担と考えるご家族は、信託を検討します。
本人が委託者、受託者に不動産を信託し、受益者を本人に設定します。
受託者に不動産売却など処分権を与えておけば、目的は達成できます。