法律専門職の中には、信託を利用すれば遺留分を主張されることはないと説明して、信託を仕事にしていると耳にしています。
その根拠は、信託財産は信託開始後は、「誰のものでもない財産」だと考えられているからです。
委託者、受託者、受益者の誰のものでもない、宙に浮いたようなイメージの財産です。
受益者は権利を持つという考え方だからですね。
「誰のものでもない財産」に、遺留分も無いだろうとも考えられます。
しかし、民法が遺留分を設けた趣旨は、残された配偶者や親族の生活保障です。
とすれば、まだ信託についての遺留分減殺請求について確固たる判例がないにしても、訴訟の際に配偶者や親族の生活保障が考慮されないとは思えません。
したがって、遺留分逃れのために信託を使うのは危険です。
信託を使う目的は、やはり財産の管理及び運用、資産承継の場面で、信託でしか目的を達成できない場合でしょう。